いわゆる「eスポーツはスポーツなのか?」問題について
Photo by Alistair Ross
eスポーツを「スポーツ」と冠すると反感を持つ一般視聴者が一定数存在するらしい。フィジカル要素の少ない競技を「スポーツ」と呼ぶことに違和感を覚えるようだ。
以下、引用記事のコメントの孫引き。
「汗水流して努力しているアスリートと同じとは思えない」
「ゲーム依存の問題深刻になってますよね!(その問題が)増えるだけ!!」
「ゲームばっかりやっていてはコミュニケーション能力育たないのでは?」
本題に行く前に、いやいや朝から晩まで野球の練習に没頭する子たちに依存症って言うか?とかゲーマーのヘッドセットって何のためにあるか知ってる?とか言いたいことは色々あるが、「汗水たらしていない」という発言について思うところは多い。
そもそも汗水流さないスポーツなんてごまんとある。
カーリングは戦略性と集中力と細かな動作が求められる競技だが、雪上競技のような強靭な「フィジカルな要素」が求められるかといえばそうではない。フィギュアスケートとスピードスケートは同じ氷上競技だが求められる「フィジカルな要素」は全く違う。ボブスレーは己の「フィジカルな要素」だけでなくそりの性能まで問われるスポーツである。
スポーツに求められる一律な「フィジカルな要素」なんてものはない。道具を使うもの、芸術点を競うもの、自然を味方につけるもの、色々なスポーツがある。あらゆるスポーツに共通なことは「一定のルールのもとに競う」ことぐらいである。
eスポーツが「汗水たらしていない」というのなら、「Dance Dance Revolution」ならスポーツとして認められるのだろうか。Kinectで全身を使うようなゲームタイトルならスポーツに認められるのだろうか。
そもそも、障害者スポーツは義手・義足・車いすといった己の肉体以外のものを装着して競技を行うが、それもスポーツとして認められないのだろうか。
武豊は「汗水流している」馬に乗っかっているだけだから、アスリートとは認められないのだろうか。
ダーツは? ボーリングは?
「フィジカルな要素」によってスポーツの定義を決めるというは恐ろしく不毛だし、心の底からどうでもいい。
身体を鍛え、頭を使い、自然を味方につけ、より早く、より強く、より美しく、より正確に。あらゆる要素がスポーツに含まれるだろう。
平昌オリンピックにあわせて、史上初となる五輪公認のeスポーツ大会が開催された。使用されたタイトルは「スタークラフト2」。
男女混合、全世界の頂点を決める大会で優勝したサーシャ・ホースティン(ゲームID:Scarlett)はカナダ出身の女性である。
スウェーデンの「Counter Strike」のチーム「シルバー・スナイパーズ」はメンバー全員60歳以上だ。デビュー戦のDreamhackでは1試合で勝利を収めた。
ゲームは人種も性別も年齢も越えて、誰でもプレイできる。身体に障害があっても、年齢を重ねても、皆が同じルールでプレイできる。ばあちゃんと父親と娘がスプラトゥーンで対戦してもいい。
「フィジカルな要素」が限定されるからこそ、eスポーツはどんなスポーツよりも“平等”であり、だからこそ全世界でみんなが熱中しているのだ。