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ゲーム業界をマーケティング視点で読み解く

日本のeスポーツ市場規模を計算してみた

eスポーツマガジン (白夜ムック565)


 日本eスポーツ連合の発足、プロライセンス制度発行などメディアを騒がせているeスポーツだが、「そもそもどれくらいの市場規模があるの? 紅しょうがぐらい?」という質問にまだどの企業も団体も答えていない。「日本は世界の流行に後れています!」という定性的な話ばかり。


 なので、すでに公表されているデータを元にざっくりとeスポーツ市場規模を計算してみた。


 まずはグローバルについて、擦られまくっているSuper Data社発行の「eスポーツグローバルマーケットレポート2016」によるeスポーツ市場規模は、


・北米: 300億円
・欧州: 293億円
・アジア: 357億円
(※いずれも1ドル109円の為替レートで計算)


 ぐらい。


 一方日本のeスポーツ市場規模を上述レポートにあわせて「eスポーツ大会を興行として運営した際の収入」として、


 ①eスポーツ興行の観戦者のチケット収入を計算

 ②大会の興行収入においてチケット収入が占める割合で割り戻す


 という手法で計算する。


 まずは①について、「ファミ通ゲーム白書」によると、5歳~59歳の人口7911万人の中で「eスポーツを観戦したり、動画で見る」という割合は全体の2%。人口にこの割合を乗算して、158万2,200人(A)の観戦・視聴者がいるという結果が求められる。

 
 (A)の中で観戦者の割合を算出するため、「LJL 2017 Spring Split Final」の来場者数、ネット視聴者数の割合を利用する。(ファミ通ゲーム白書の調査と開催時期が近いので) 東京ビッグサイトで開かれた大会の来場者数は2500人。対してネット視聴者数はYouTubeが4万1484人(最大視聴者数のGame1を採用、2018年2月7日時点)、Twitchが2万1991人(2018年2月7日時点)、あわせて6万3475人。来場者が占める割合は3.8%。この割合を用いて(A)に乗算すると5万9954人(B)という日本におけるeスポーツ観戦者数が求められる。


 (B)は半年に1回程度直接会場で観戦すると仮定し、(B)に2を乗算して111万9909人(C)


 (C)が購入するチケット価格は2500円として、eスポーツ興行収入のチケット収入は(C)に2500を乗算し、結果は2億9977万円(D)


 次に②について、株式会社NTTデータ経営研究所のレポートを使う。「平成28年コンテンツ産業強化対策支援事業(オンラインゲームの海外展開強化等に向けた調査事業)報告書」(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000848.pdf)によると、ゲーム会社主催型のeスポーツ大会におけるチケット収入が占める割合は40%。他、スポンサー料が40%、放映権料が13%、物販が7%という割合。


 この割合を用いて(D)を0.4で割り戻すと、7億4943万円という数値が求められる。これがざっくりとした日本のeスポーツ市場規模だ。


 この値を北米300億円、欧州293億円、アジア357億円という数字と比べてみれば、いかに日本のeスポーツ市場規模が小さいかが見てとれる。


 マーケティングの第一歩は最初の認知を獲得すること。認知した人からじょうごのように選別されてファン(消費者)が形成されていくが、日本では2017年時点の認知率が2%に過ぎなかったので、これくらいの市場規模にしかならない。


 みんな「eスポーツが日本だけ流行っていない!」というところに目を奪われがちだが、こうなっている現状の要因の一つはPCゲーム市場の小ささにある。eスポーツではPCゲームが主流であるが、日本はモバイルゲーム、家庭用ゲームがゲーム市場の大半を占める。


 かたや北米のPC市場規模は7000億円程度、アジアは1兆円を超える。PCゲーム市場、PCゲーム人口の母数にそもそも差があり過ぎる。


 「モバイルゲームや家庭用ゲームを用いた日本独自のeスポーツを」という主張もなくはないが、「世界で活躍する選手を」とか「オリンピックを見据えて」といった議論をするためには、日本でPCゲーム人口を増やしていくほかない。


 というわけで結論は「ゲーミングPC買ってPCゲームやろうね。」現場からは以上です。