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【ドラクエ11 日記】ゲームにとってストーリーとは何か

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 小島秀夫TBSラジオのライムスター宇多丸の番組に出ていた時に「ゲームにおけるストーリーの役割」について話をしていた。以下、一部を書き起こし。

宇多丸「ゲームにストーリーっていうのは、やっぱりプラスなものだとお考えですか」


小島「えっとねえ、ストーリーが重要ではないんです、そもそも。で、僕が欲しかったのは世界観なんですよね。そこが映画なんですよ」


宇多丸「はいはい」


小島「メタルで言うと、ある人間がどっかに隠れてて追われてる。で、プレイヤーはそれを動かすだけなんですけど。今までの、それまでのゲームはそれ全く説明なくて。自分は誰でどの時代で何に追われてて何をしようとしているのかというのが全く分からない。そこの世界観をつくる。そこが重要だと思うですね。で、そこではじめて目的ができる」


宇多丸「ストーリーというか、動機付けというか」


小島「ゲームの場合はそうですね。だから自分がその世界で、何をどういう目的でいて、自分は何をなすべきかというのが分かりながら、そのルールに従っていくことで、どんどんどんどん先に行きたくなるというか、使命感が出てくる。自分が動かしているっていうことになるんで」


出展: 『メタルギア』シリーズの小島秀夫監督×ライムスター宇多丸、濃厚60分対談で見えてきたゲームと映画の未来とは?


 ゲームにとって重要なのは操作性であり、システムであり、グラフィックである。


 しかし、それと同じくらいストーリーも重要な役割を果たす。

 
 目の前の敵を倒したい、アイテムを集めたい、先に進めたい。そんな動機付けを行うのが、ストーリーだと。


 ドラクエ11は命の大樹を過ぎたところから急にストーリーの"ひき"が強くなる。


 魔王の強大な力によって、世界が破滅に向かっていく。街は壊滅し、フィールドには凶悪なモンスターが跋扈するようになる。勇者のもとに集った仲間たちもバラバラになってしまう。


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 絶望した人々が最後に集うのは、主人公の故郷イシの村に建設された「最後の砦」。ここには魔王によって国を追われたデルカダールの民が身を寄せ、生き残るための戦いを繰り広げている。


 砦で軍を指揮しているのはかつて勇者達と敵対していたグレイグ。そのグレイグが勇者の故郷で民達を守っている。


 いままで冒険してきたこと全てが伏線になって、全てがひっくり返る。かつてのあの場所は今はこんなことになっていて、あのキャラクターはこんな目に合っている。


 BGMは寂しいトーンになり、光りの差さないフィールドはどこまでも憂鬱だ。

 
 それでも救われるのは、街にまだ希望があるから。今まで対立していたデルカダールの民が一緒に魔物と戦ってくれる。そして、最強の敵だったグレイグは仲間になる。


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 ここまで綺麗にストーリーが展開すると、もうぐうの音も出ない。今までの冒険で訪れた全ての場所、出会った人々を救うため、勇者は旅に出なければならない。この世界に光を取り戻すために、先に進まなければならない。魔物を倒し、もう一度仲間を集め、魔王を倒さなければならない。


 王道のストーリーといえばそう。新しさは無いけれど。


 けれど…こーいうのが良いんだよ!レベルを上げて強くなって、心からブッ倒したい魔王を倒す!そんで世界を救う!


 プレイヤーを"素直な気持ち"で目的に向かわせるのは難しい。幾多のゲームをプレイし、同じようなストーリーを反芻しているプレイヤーはすれ切っている。小手先のストーリーではプレイヤーはついてこない。ストーリーをガン無視で、カジノに入り浸るか、バグ探しを始めるのが関の山だ


 ドラクエ11の世界観はプレイヤーを"素直な気持ち"にしてくれる。すっげぇ"素直な気持ち"で世界を救いたくなる。

 
 すれ切ったプレイヤーにこそドラクエ11をプレイしてほしい。つくづくそう思う。


 …そんなわけで魔王をブッ倒すために絶賛世界を冒険中の勇者。


 デルカダール城に巣食っていた屍騎軍王ゾルデとかいうベルセルクに出てきそうな名前の骸骨戦士。こいつのゾーン技が強いのなんの。文無しになるまで全滅を繰り返したので、仕方なくレベル上げをして、装備を整えてようやく撃破。


 ドゥーランダの山でロウを仲間にした後、メダチャット地方で出会ったシルビアはなぜかパレード団を形成していた。曰く「世界のみんなを笑顔にするために」活動しているらしい。そして、勇者にも衣装を渡して、一緒に踊りながらフィールドを闊歩することに。


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 完全に〇ャニーズですやん

 
 そろそろプレイ時間は40時間を超え、ストーリーが終焉に向かうにつれて、ストーリーが終わるのが寂しくなってきた。


 とはいえ、やるべきことはまだまだある。


 世界に散った仲間たちをあつめなければならない。


 でないと、パーティーが爺さん・おっさん・元おっさんのプライド男祭り状態で辛いんである。


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