イケてるベンチャー企業の見つけ方
【目次】
スコッパーが活躍する小説業界
小説投稿サイト「小説家になろう」には毎日数えきれない作品が投稿されている。玉石混じった作品の中から、玉のような作品を見つけ、2chやSNSで報告する人は「スコッパー」と呼ばれる。(Webに流れる二次創作を見つけてくる人全般の呼称でもある)
スコッパーの行動原理は、未だ世に出ぬ素晴らしい作品を自分の手で発掘すること。分刻み、ピーク時には秒刻みで追加される「新着の短編小説」ページには、「姑獲鳥の夏」を超えるような傑作が埋まっているかもしれない。石だらけの地面にスコップを入れ、玉を見つけ出し、自分の手で発掘する。発掘された作品が人気を博せば、自分の審美眼が評価されたことに等しい。そこに快感がある。
書籍化もされ、様々なメディアで"擦られている"作品では意味が無いのだ。メディアに"擦られた"作品は、プロの編集者や批評家のフィルタリングがかかっているため、一定の品質が保証されている。一般人の審美眼がつけいる隙は無い。
読むに堪えないような小説の山を掻い潜り、声に出して読めない作者の名前に首をかしげながら、発掘作業に従事した者にだけ、特別な栄誉が送られるのである。
「小説家になろう」は新人小説家の一種の登竜門のようになっているが、かような投稿サイトが無い時には、小説家になるには新人賞に応募するしかなかった。ラノベだったらスニーカー、本格だったらメフィスト、純文学なら群像といった具合だ。
新人賞に応募すると、編集者が作品を評価してくれる。正しい文法が使われていれば、第一段階はクリア。破綻なく物語が構成されていたら、次へ。キャラクターが魅力的で、物語が面白ければ最終候補に。さらに、光る何かがあれば新人賞に輝く。
これらの基準に従い、出版社の数少ない編集者が、何百、何千もの応募作品を選別する。全ての作品を最後まで読んでいては時間がいくらあっても足りないので、ななめ読みして足キリすることも多いだろう。限られた人員で数をこなさなければならないのだから仕方がない。
「小説家になろう」はこの選定作業を、名もないスコッパー達がやってくれる。スコッパーによって選定基準が多様なため、品質が安定しない懸念もある。とはいえ、面白くない作品は発掘されても人気を得ることなく、Webの海に消えていく。ユーザーに受ける作品だけが、ランキングに入り、SNSで言及され、人気を増幅させていく。
編集者にとっては、品質が評価された作品を容易に見つけることができる。わざわざ新人賞を開催し、受賞者という箔をつけて売り出さなくても、勝手に売れるであろう作品がゴロゴロしている。業界で「小説家になろう」→書籍化の流れが一般的になったのは必然であった。
知人友人ネットワークが活躍するベンチャー業界
こういったスコッパーが活躍し始めた小説業界とベンチャー業界を比較したい。
シード期にベンチャーを発掘し、資金を投じ、創業者と苦楽を共にしたエンジェル投資家の話は枚挙に暇がない。エンジェル投資家であるクリス・サッカは、ツイッターやウーバー、インスタグラムといった名だたる企業に資金を投じてきたが、どれも創業者との友達付き合いから始まった。エヴァン・ウィリアムズ(ツイッター創業者)やトラビス・カラニクック(ウーバー創業者)とシリコンバレーのビーチや自宅でサービスの未来を語り合い、少ない資金をシード期に投入した。
Gunosy上場まで会社を引っ張った木村新司も、まだ法人化もされていないサービスを開発していた創業者と食事をしながら、シード期の投資を決め、積極的に会社運営に関与するようになった。
ベンチャー企業を立ち上げて運営していくには、知人友人ネットワークが不可欠である。資金を調達するにも、人材を登用するにも、顧客を集めるためにも、様々な人に出会わなければならない。そのためには、知人友人ネットワークを広げ、人に出会う可能性を高めなければならない。
Femto Startupを運営する磯崎哲也の「起業のファイナンス」では、このネットワークを"ソーシャルグラフ"と呼んでいる。
つまり、イケてるベンチャーの要件は、「イケてるソーシャルグラフの中に潜り込んで、自分の必要をかなえる能力」、たとえば、「資金を出してくれる人にたどり着いたり、人材などを見つけ出したり、営業で成果を上げる能力があること」ということになります。投資をする側の人も、単にその経営者の「思いつき」や「計画」がいいかどうかではなく、イケてるソーシャルグラフの中にうまく入り込めているかどうか、入り込む能力があるかどうかを見る必要があると思います。
引用元: 磯崎哲也「起業のファイナンス」
シリアルアントレプレナーの成功可能性が高いのはこの"ソーシャルグラフ"によるもので、知識や技術に加えて、前の会社で培った"ソーシャルグラフ"が次の会社の運営に大きく寄与しているのだ。エンジェル投資家やVC達は自分たちが築いたネットワークに流入してきた情報を辿り、未だ世に出ぬベンチャー企業を発掘し、そこに資金を投入する。
「起業家になろう」
とはいえ、筆者は小説業界のように、ベンチャー企業を発掘するスコッパーが現れてもいいのに、と思う。
ネットワークのフィルタリング効果は高く、ネットワークに引っ掛かるベンチャー企業はある程度の質が保証されている。一方、ネットワークにまだ入り込めないベンチャー企業も数多く存在する。「東京大学で人工知能を勉強していました!」といった輝かしいキャリアが無く、ソーシャルグラフを築けていないが、確固たる技術やビジネスモデルを持ったイケてるベンチャーもあるはずだ。
「小説家になろう」のように、イケてるベンチャーを素人スコッパーが発掘し、それをユーザーの目に晒すことで、品質が見える化・定量化(アクセス数・ユーザー数)されれば、投資家にとってもイケてるベンチャーを探しやすくなるし、ベンチャーにとってもスタートダッシュをかけやすくなるのに、と思う。
メディアに掲載されるプレスリリースやService Safariといったキュレーションサイトはあるが、これらの情報ではベンチャーのイケてる具合を継続的にウォッチすることはできない。
…ここまで来たところで、当該記事は弊社サービスの壮大なステマであったことを明かすのだが、WikiPlanはそんなソーシャルグラフをまだ築けていないがイケてるベンチャーを発掘することに資するサービスである。
ユーザーは、TechCrunchにもTHE BRIDGEにも"擦られていない"ベンチャー企業のプランを読み、そこから"イケてる"と思うベンチャーを発掘し、50円を融資する。つまり、発掘する。後々、このベンチャーが大きく羽ばたいて1,000億円企業に成長した暁には、「プランが投稿されて30分で融資を決定した○○氏」という栄誉が与えられるのである。
WikiPlanは、いわば、「起業家になろう」サービスといってもいい。知人友人が少なく、ソーシャルグラフは築けていないが、自分のプランはきっとイケてるはずだ、と信じる起業家が、WikiPlanに投稿し、実績(アクセス数・融資人数)をあげる。スコッパーに発掘され、ユーザーにイケてると評価されたベンチャーは、結果として、素晴らしいソーシャルグラフを築けるように成長しているはずだ。
ソーシャルグラフに代わる、イケてるベンチャー企業の発掘の仕方。数千・数万のスコッパーが毎夜ベンチャー企業を発掘するような生態系を築くことができれば、ベンチャー業界は堰を切るように活性化するのではないだろうか。
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