日本のベンチャー投資はどれほど少ないのか?
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グロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一さんが、TechCrunchのインタビューで、日本のベンチャーファイナンスの資金量の少なさに言及している。
2014年度の国内企業に対するベンチャー投資額はおよそ740億円。この金額がどれほどかというと、他国と比べるとこんな感じだ。
【国別ベンチャーキャピタル投資金額】
・アメリカ: 約4兆円・ヨーロッパ: 8,900億円
・カナダ: 1,200億円
・中国: 4,200億円
・インド: 2,160億円
・イスラエル: 2,040億円
※2013年度の実績。1ドル120円換算。
出典: Global venture capital insights and trends (Ernst & Young)
720億円というのは、アメリカは別格としても、他国にも及ばない数字である。
ベンチャーに資金が流れる仕組み
仮屋薗さんも触れているが、アメリカでのベンチャー投資が盛んになったのは、機関投資家のマネーがベンチャー・キャピタルファンドに流入し、プライベート・エクイティ・マーケットが急成長したことによる。アメリカでは、1979年に労働省によってプルーデント・マン・ルール(企業年金の運用関係者が遵守すべき行動基準)が見直され、年金基金や大規模な信託基金がリスクの高い仲介機関に投資できるようになった。
背景にあるのは、ハリー・マコウィッツのポートフォリオ理論だ。この理論によって、リスクが充分に分散されてさえいれば、機関投資家によるリスク投資は正当とみなされるようになった。
機関投資家のポートフォリオ戦略は機能した。1980年からドットコムバブル崩壊前の1999年までに、プライベート・エクイティ・マーケットは35倍にまで成長。多くのベンチャー企業が大企業へと変身を遂げた。
ベンチャー投資にリスクはつきものだが、そのリスクを理解し、うまく分散する技術が発達したことで、ベンチャー産業が潤ったのだ。(…とはいえ、ファンドや銀行によるポートフォリオ戦略、リスクアセスメントによって、負債のレバレッジが過剰に膨張し、結果、リーマンショックを引き起こしたことは忘れてはならないが。)
一方日本はというと、長い間、銀行系のベンチャー・キャピタルが投資の大部分を担っていた。それもそのはず。日本人は資産の多くを貯金で保有している。その割合は資産の50パーセント以上だ。当然、資金循環の中で銀行が多くのマネーを保有するため、投資の一番の担い手は銀行となる。
銀行は独立系のファンドに比べて、ベンチャー投資に対しては慎重だ。結果、アメリカのみならず、GDPでは大きく差をつけているカナダやイスラエルにも水をあけられている。
リスクマネーの供給を
ベンチャー投資において、リスクに対するリターンはあまりに大きい。日本のベンチャーでの大成功例である楽天は、IPO前の資金調達額は数億円だったが、今の時価総額は2兆円を超える。GoogleやAppleをひくまでもなく、ベンチャーに対するリスクマネーの供給がどれほど経済(GDP)に恩恵をもたらすかは明白だ。
産業構造が目まぐるしく変化し、新しいビジネスが凄まじい速度で生まれる時代では、その速度に合わせて、新しい企業が生まれなければならない。そのためには、リスクマネーの資金量が増加し、企業が生まれる生態系にマネーが供給される必要がある。
…というか、筆者は当ブログで何度も言っているのだが、この国はリスクマネーの出し手が少なすぎるのである。
クールジャパンでおなじみのコンテンツ産業にしてもそうで、国が御旗を掲げているわりには、コンテンツの作り手は万年資金不足に悩んでいる。(結果、アニメーターは年収110万円で暮らすはめになる)
銀行系もコーポレート系も独立系も政府系も、とにかくリスクマネーに対して渋ちんだ。
日本でベンチャー投資が少ないということの原因は色々と根深い。
短期間では無理だが、デフレ脱却とか(伴って現金→投資へのマネーの流れの変化)、リスクマネジメントの発達とか、クラウドファンディングの普及等を通じて、ベンチャー投資が少しでも増えればいいなと願う、1ベンチャー企業経営者である。
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