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isologue 磯崎哲也さんのセミナーに行ってきた

起業のファイナンス 増補改訂版


トーマツベンチャーサポート主催のベンチャーファイナンスに関するセミナーに行ってきた。場所は梅田の阪急グランドビル。広い会議室が埋まるくらい、沢山の人が来ていた。


メインゲストはisologueでおなじみの磯崎哲也さんだ。


ベンチャーをやろうという人なら誰でも持っている黄本(起業のファイナンス)と赤本(起業のエクイティファイナンス)。筆者も多分に漏れず両方持っているし、昔からisologueを愛読しているので、生の磯崎さんを見られて感激した。本の帯の写真のまんまだった。


セミナーは二部構成。前半は磯崎さんによるエクイティファイナンスに関する講義。後半は大阪で活動されているベンチャーキャピタル(VC)の方を交えたパネルディスカッション。それぞれ1時間程度の長さだった。資金調達に関する"現場の声"を聞け、非常に勉強になった。


以下、それぞれの部で印象に残ったところのメモを残しておく。

【講義パート: 磯崎さん】


・資本政策の失敗が原因で成長できないベンチャーはたくさんある。


・よくあるのは、シード期でバリュエーション額が低い時にエンジェル投資家に対して大量の株を渡してしまうこと。結果、創業者の持ち株比率が下がり、会社が"死んだ"状態になる。


・株は安いほどいい、ではない。時にバリュエーション額を上げて高く設定することが大事。


ベンチャーは精神だ(!?)将来的な事業拡大を思い描けば、おのずと適正なバリュエーション額を導けるはず。


成功したベンチャー経営者はお金を求めていない。ラリー・ページは10兆円が欲しくて検索サービスを始めたわけではないのだ。


・Femto Growth Capitalを立ち上げた頃は、シード期に少額投資するVCはあったが、アーリー期に1億円程度のまとまった投資をするVCはほとんどなかった。


・VCから資金調達する時は、担当者とそりが合うかどうかが大事。VCは、お金を出して終わりではなく、経営に参画する。一緒に経営していけるかどうかを見極めないと。


・創業者の持ち株比率が下がっても、VCが資金注入することでバリュエーション額が上がるなら、結果的に得になる。資金調達は持ち株比率だけで判断してはいけない。


IPOだけじゃなくて、M&AのExitも増えるといい。アメリカでは既にそうなっている。日本はアメリカより四半世紀遅れている。


日本は上場前に調達できる資金額が少ない。楽天は上場前には4.5億円しか調達しなかった。にも関わらず、今では2兆円の価値がある。


・転じて、投資家にとっては、日本のベンチャー市場は、安い金額で成長株を買えるお得な場所なのでは。


事業計画は大事だけれど、その通りに行くことなどない。臨機応変であることが大事。


優先株はもっと広まるべき。(売却時の1株あたりの株価に関わらず、一定額の支払が約束された株式) リスクをヘッジできるため、ベンチャー投資が活発になる。


・某商社で働く商社マンの口癖は、「で、なんぼ儲かるんや」。

【パネルディスカッションパート: 磯崎さん、バックベンチャーズ山舗さん、ABCドリームベンチャーズ栗田さん、サンブリッジコーポレーション平石さん】


ベンチャーは"向う岸"まで着くのが大事。やり遂げること。平野レミさんの料理と同じ(!?)。(山舗さん)


・マレーシアでは、エアアジア登場後、ベンチャーブームがやってきた。大阪でも大規模なExitが一つ出れば、トレンドがやってくるのではないか。(平石さん)


関西DNAをもったベンチャーに成長してほしい。"関西発"が、全面に押し出されるのではなく、自然ににじみ出るような企業が出てきてほしい。(栗田さん)


失敗してもセーフティーネットがあればいい。ベンチャーはほとんどが失敗する。失敗後をイメージできないと、挑戦し辛い。(平石さん)


コロンブスカトリック両王資金を申し出てまで新大陸を目指した。それに比べれば、ベンチャー資金調達は易しいよ(!?) (磯崎さん)


こんな感じの二時間だった。パネルディスカッション終了後、名刺交換会があったのだが、各登壇者の前に凄まじい列ができ、且つ、回転率を上げるために1人10秒の持ち時間が設定され、主催者がマイクで10秒を秒読みしながら名刺を交換するという修羅場だったので、筆者はサンブリッジの平石さんとだけ名刺を交換させて頂いて、そそくさと帰ってきた。


まあ、会社やってても、こういうの苦手なんは全然変わらんよね…。