新しい決済サービスをマッピングしてみた
今、金融系のスタートアップがアツい。
FinanceとTechnologyを掛け合わせた様々な金融系のスタートアップは総称してFintech(フィンテック)と呼ばれている。
金融系といっても、会計サービス、銀行系サービス、家計・資産管理サービスと領域は様々だ。その中でも、決済に関連するサービスが大手・中小入り乱れる戦場になっている。
決済に関わる主要な新しいサービスを取引の種類・タイミングによって以下のようにマッピングしてみた。
決済サービスの概観
まずはWebを介して個人が会社に対して決済する取引について、『Stripe』がある。FacebookやTwitter、Appleがその技術を採用し、2014年末の資金調達で35億7000万ドルもの評価を受けた新進気鋭のサービスだ。『PayPal』が地ならしをしたWeb決済の領域に、"サイトへの設置の利便性"を武器に殴り込んだ。『PayPal』のように決済時にサービスサイトにリダイレクトされることが無いのもサービスが普及している理由の一つだ。
更に同じ領域で攻勢をかけるのが日本発の『Spike』。このサービスは一定金額以下の取引であれば手数料を無料にするという凄まじい武器を引っ提げてきた。将来的には金額の上限を設けず、全ての取引きの手数料を0円にするという。
Web決済は『PayPal』という巨大な先行者がいながら、スタートアップ企業が新しい付加価値を模索する熾烈な戦場となっている。
同じく熾烈を極めるのが直接個人が会社に対して決済する取引だ。例えば、レストランで客が支払する行為等が該当する。
この領域について、Appleが『Apple Pay』を発表した。クレジットカードやデビットカードをPassbookアプリに登録し、スマホ・タブレット端末を起動して店に設置された非接触規格のリーダーで読み取りすれば決済できる。カードを携帯しなくてもよいことに加えて、店側にクレジットカード番号を知られずに済むため、フィッシング詐欺防止になる。
非接触規格のリーダーの有無が『Apple Pay』の弱点ではあるのだが、この弱点を見事に克服するのが『Stratos』だ。『Stratos』に所持するクレジットカードを登録すれば、それらすべてをまとめた1枚の専用クレジットカードが発行される。このカードはどのクレジットカードリーダーでも読み取りが可能で、店で決済すれば、自分が設定した優先順位の高いクレジットカードから自動的に引き落としされる。『Apple Pay』同様にクレジットカード番号を知られることも無い。『Apple Pay』が自らが普及させたiPhoneやiPadといったインフラを最大限に活用したサービスであるのに対し、『Stratos』は何十年も前から普及している既存のインフラを最大限に活用したサービスと言える。
大手企業ならいざ知らず、小さなレストラン・商店では登録が煩雑なためリーダーを設置していないというケースもある。そこに手を打ったのが『Square』だ。Twitter創業者のジャック・ドーシーが新しく立ち上げたサービスで、ユーザー登録し、小型のリーダーをスマホ・タブレットに差し込むことで簡単にクレジットカード決済を受け付けられる。店やオフィスでの決済はもちろん、イベントや出張先でもスマホ・タブレットで決済できるため、フリーランスや規模の小さな会社にとって画期的なサービスである。
最後に、殆ど誰も手をつけていない個人が個人に対して決済する取引きに目をつけたのが『LINE Pay』だ。銀行口座と連動した仮想口座を持つことで、LINEの友達同士で手数料0円で送金できる。LINE公式ページにあるように、個人間で金銭のやり取りをする割り勘などのケースで役に立つ。なんといっても、LINEメッセージで送金行為が行えるという手軽さが売りで、今後様々な利用用途が生まれる可能性がある。
決済サービスの付加価値
既存の決済サービスにはなく、新しいサービスが提供する付加価値は大きく分類すると、
- セキュリティ
- 手数料
- 手軽さ
である。
Webや店でクレジットカードを使用する時の一番の懸念点は番号を知られてしまうことだ。見知らぬ取引先に番号を知られてしまい、悪用されるリスクは余りにも大きい。『Apple Pay』や『Stratos』といったサービスは、サービス運営会社にのみ番号を教えれば番号に係るセキュリティが担保される。『LINE Pay』も同様で、銀行口座を教えることなく、決済できる点はセキュリティ向上に大きく貢献する。
手数料の点でいえば『Spike』が群を抜いている。タダより安いものは無い。Google、Facebook、Youtubeといったあらゆる無料サービスが驚異的なスピードで世間に普及したように、『Spike』の無料という性質はこのサービスを飛躍させる大きな可能性を秘めいている。
最後に、手軽さでいえば『Square』だろう。スマホ・タブレットという今や誰もが持っている端末をリーダーにしてしまうこのサービスは、全ての人を個人商店にしてしまう。フリーランスやベンチャーといった小さな取引者が増えていく昨今、サービスの需要は計り知れない。
これら決済のサービスはまだローンチから間もない。Fintechの熱の高まりに伴って、これから新規参入する企業も増えていくだろう。
人はより安全で、より安く、より手軽な手段を求めている。
いつか、海外旅行で日本にやってきたインド人観光客が、おばちゃんが一人で営むような小さな蕎麦屋で、スマホか、1枚の不思議なクレジットカードで決済できるような未来がやってくる。