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ゲーム業界をマーケティング視点で読み解く

思い立ったが吉日

Pragser Wildsee / Lago de Braiesflic.kr photo by be_am25


筆者は現在コンサルティング会社に勤めているのだが、8月いっぱいで退職する。


そのあと何をするか、といえば、クラウドファンディングサイトを運営する会社を立ち上げるつもりだ。


この日記を書いている時点では、法人登記もしていないし、サイトも立ち上がっていない。まだ、何ひとつ始まっていない。


記事のタイトルに"起業日記"と冠したのは、まだ何も始まっていないけれど、何かを始めようとする過程を記事にすれば面白いのでは、と思ったからである。


起業の苦労や学びを書いた本は山のようにあるけれど、起業の様子を実況?しているケースは少ないのではないだろうか。


これから、【起業日記】と冠した記事では、"マネーxコンテンツ"のテーマとは別に、自分の会社を立ち上げる様を日記に認めていく。過去の出来事から初めて、現在進行形の出来事まで。右も左も分からないスタートアップの初心者が右往左往する様を楽しんで頂ければ幸いである。

きっかけはピンクの本


フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方


一番最初に起業を思い立ったのは2014年8月31日。御堂筋沿いのカフェで本を読んでいる時だった。


2014年の年初からずっと転職について考えていた。コンサルティング会社に勤めている人間は、遅かれ早かれ、いずれ会社を離れていく。同業他社に行くことが多いのだが、どこかの時点でコンサルティング業界を離れて、他の業界で終の棲家を探す。


著者も、30歳を前にして、ポストコンサルのキャリアパスについて色々悩んでいた。今まで製造業でコンサルをやってきたので、製造業の一般事業会社を狙おうか。はたまた、全く違う業界にチャレンジしてみようか。昔から金融業界に興味があったので、その門戸を叩いてみるか。


しかし、7年近くコンサルティング会社の自由な社風に染まってきた自分に合う会社があるのだろうか。年功序列で、上司に言いたいことがあっても、ぐっと胸の内にしまい、社内評価のために耐え難きを耐え忍び難きを忍ぶようなことが自分にできるだろうか。


色々な考えが去来するが、なかなかまとまらない。形にならない。リクナビから来るメールを開いてななめ読みしてそっと閉じる生活を続けて、幾何か月が過ぎた。


そんな折にダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来』を手にとった。たしか梅田のジュンク堂で購入した。


内容はこうだ。ホワイトハウスのスピーチライターだったピンクは、過労の余りホワイトハウス内でリバースしてしまい、それを機に組織人としての仕事を辞め、フリーエージェント(自営業者)になった。妻子を養っていくために今までの経験を生かしてライターとして生計を立てる傍ら、自分と同じように組織を離れてフリーエージェントとなった人に興味を持ち、独自にフリーエージェントの実態を調査した。その結果をまとめたのが本書である。


この本はアタリだった。スピーチライターならではの"読ませる文章"で、ぐいぐい本に引き込まれる。


ピンクによると、アメリカ社会では4人に1人がフリーエージェントとして働いている。彼・彼女らは組織には属さず、ネットなどを通じて自分のスキルを売り込み、自分の力で仕事を受注する"個人商店"を営んでいる。


筆者はアメリカに住んでいたので、アメリカ社会の風土が少しわかる。福沢諭吉の『一身独立して一国独立す』ではないが、個人が独立し、自由を謳歌し、そして高みに登ること、つまりアメリカンドリームをつかむことを尊ぶのがアメリカ社会だ。


アメリカの大学で一番えらいといわれるのは、ロケットサイエンティストでも、トレーダーでもなく、自らの力で道を切り開いた人間、フリーで活躍したり、brick-and-mortarで店をやったり、ベンチャーを立ち上げた人間だ。


そういえば、筆者と同じ学部で最も成績優秀だった同級生は、卒業後、Webデザインの会社を立ち上げた。


コーヒーを飲みながらピンクの本を読み進め、そんな同級生のことを思い出したりしているうちに、ふと、思いついた。なんとも形容のし難い、ビビビっという直観というか、そんなものが頭に浮かんだ。頭の上の豆電球に明かりがついた。


転職先を悩むくらいだったら、自分が好きなように仕事ができる会社をつくればいいんじゃないか、と。