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FinTechは日本のコンテンツ業界を変えるのか

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日本のコンテンツ業界におけるのっぴきならない問題として、資金調達がある。


ハリウッドが数百億円の予算の映画を量産する一方、日本ではその100分の1の予算の映画が大作として扱われる。


とにかく日本のコンテンツ業界はカネの回りが悪い。

製作委員会方式の弊害


日本のコンテンツは、伝統的に、製作委員会方式で作られる。任意組合を組成し、配給会社、広告代理店、玩具メーカーなどの少数の大企業がそこに資金を拠出することで、コンテンツを製作するというスキームだ。


例えば、2016年4月公開の『アイアムアヒーロー』の製作委員会には、東宝、エイベックス・ピクチャーズ、小学館、電通、GYAO!といった企業が名を連ねる。


こういった企業は、資金を拠出する対価として窓口権、つまり特定分野における著作権利用の独占権を得る。


製作委員会に参加する企業は、興行による収入に応じて、配当金を得る。興行がうまくいけば、配当は大きい。が、コンテンツに失敗はつきものだ。


その失敗のリスクをヘッジするために、参加企業は窓口権を取得する。コンテンツがヒットしなくても、窓口権の行使によって利益が見込めれば、リスクを低減できる。


通常、コンテンツ製作のように大きな成果物をつくりあげるプロジェクトで資金の出し手となる金融機関が製作委員会に名を連ねることが少ないのは、著作権を利用したビジネスを生業としていないからだ。


加えて、任意組合である製作委員会では会計の開示義務が存在しないため、興行に係るリスクや得られるリターンを精緻に試算できない。そのため、金融機関はコンテンツを魅力ある投資機会として認識していない。


2009年公開の『レインフォール』では、製作委員会の代わりにSPC(特別目的会社)を立ち上げて、会計内容を開示し、金融機関から資金を調達するというスキームが実験的に採用されたことがある。しかし、当該スキームは未だ普及していない。

FinTechでコンテンツを金融商品化する


コンテンツ製作において、金融機関などの投資家から資金を調達するには、会計内容を見える化し、係るリスクを試算する必要がある。


この二つを実現させる手法として、FinTechが期待できる。


参考になるのはアメリカのカベージ(Kabbage)による中小企業向けの融資サービスだ。


カベージは中小企業が融資を申し込みすると、6分で融資の可否を判断し、翌日に資金を振り込みしてくれるというサービスである。


カベージは、中小企業が使用する会計クラウドから財務状況を、決済サービスやECサイトから売り上げ動向のデータを取得し、人工知能にデータを読み込ませ、与信枠を自動で判断させる。カベージの仕組みは、Webで取得できる様々なデータを用いることで、開示情報が限られている中小企業に対する迅速な融資判断を実現した。


カベージの仕組みはコンテンツ業界にも応用可能だ。


コンテンツ製作の主体がクラウド上に会計情報を開示する。会計情報は資金調達するために必須の情報源だ。会計サービスがクラウド化した昨今、データの開示に係る人的・金銭的コストは限りなく小さい。


コンテンツ製作の主体は、今のように製作委員会でも良いし、制作会社が引き受けても良い。ハリウッドでは独立系の制作会社が先頭に立って金融機関から資金を直接調達するケースも多い。


会計情報の他にも、融資判断に資する情報は様々だ。出演者、脚本家、原作物、元シリーズの興行。会計情報に加えて、これらの情報も全て、人工知能に投入する。そして、投資に係るリスクを試算する。


リスクが試算され、正しい利回りが計算されれば、どうなるか。コンテンツを金融商品として取引できるようになる。


コンテンツがヒットするかしないかの予測は極めて難しい。だから、人工知能を用いたとしても、出来上がるのはハイリスクな商品だ。


ハイリスクな商品にも資金の出し手は存在する。ハイリスクで高利回りだからこそ、投資機会としての魅力も大きい。コンテンツに特化したファンドが生まれる可能性もある。

資金を拠出するプレイヤーが増加する


資金を出すのは機関投資家だけではない。


昔、マネックス証券が発行した『ときメモファンド』というものがあった。ときメモファンドに投資したのは個人のファンであった。ときメモファンドはファンから消費ではなく投資を募るという仕組みの先駆けだった。


同様に、モンハンファンドアイマスファンドといった様々な金融商品が出てきたら、多くのファンが投資家となり、多くの投資資金が流入する可能性がある。


クラウドファンディングの仕組みも、個人から投資を募るインフラとして期待できる。


今では購入型と呼ばれる出資に対して物品・サービスを見返りとして提供するクラウドファンディングが一般的だ。今後、金銭を見返りとして提供する投資型のクラウドファンディングが普及すれば、コンテンツ関連の金融商品がWebで活発に取引されるかもしれない。

仮想通貨を用いてグローバル化する


筆者が考えるFinTechの技術をコンテンツ業界に適用する最もラディカルな案は、仮想通貨を用いて資金調達するというものだ。


仮想通貨は決済・送金に手数料を要しない。


だから、全世界のファンがクラウドファンディングで1口10万円の金融商品を購入してくれるかもしれない。日本では100人しか集まらないかもしれないが、世界ではその100倍の出資者が集まるかもしれない。


コンテンツが世界で消費されるようになった次には、コンテンツが世界で投資されるようになる。


消費も宣伝も製作もファンの交流も、あらゆることがWebで進行するコンテンツ業界において、古色蒼然と残る資金調達という領域は、FinTechによって大きく変わる。プレイヤーが増え、融資が人工知能によって行われ、仮想通貨が流通すれば、資金調達で動くマネーの量は、今とは比べ物にならないほど膨大なものになるだろう。


そして、多額の資金を調達できるようになった暁には、『デビルマン』を作りなおそう。マーベルみたいな感じに。