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戦姫絶唱シンフォギアGX第1話とコンテンツファイナンスの可能性

f:id:ktadaki:20151015090418p:plain ©ProjectシンフォギアGX


最近、30分に満たないショートアニメを頻繁に見かけるようになった。「ニンジャスレイヤー」、「ミス・モノクローム」、「ビキニ・ウォリアーズ」、「洲崎西」。


アニメの企画会社からすれば、30分で1期分のアニメを作るよりもリスクを抑えられる。制作会社からすれば比較的規模の小さいプロジェクトをたくさん回せば経営が安定する。人気が出れば、メディアミックス(マンガ、ドラマCD、キャラクター商品、ラジオ、パチンコ・パチスロ等の展開)も視野に入る。


30分アニメ1本を作る製作費用は、ざっと1,000万円~1,500万円だ。この費用をペイさせるために、製作会社は元請け会社からの製作委託料で、資本を入れて製作委員会に参加できた場合は著作権の二次利用料で儲ける。


アニメ産業に関わる会社にとって、アニメの直接的な収入、つまり劇場アニメ、映像ソフト(セル/レンタル)、テレビアニメ(テレビ番組制作費含む)、配信が売上に占める割合は決して大きくない。株式会社メディア開発総研の調査によると、国内アニメーション市場は2428億円だ。一方、日本動画協会が発表したアニメ作品に関連するあらゆるビジネスを含めた市場は1兆4913億円にものぼる。(いずれも2013年実績)


要するに、アニメはメディアミックスで儲ける産業だ。


キャラクターだけでいいのか


メディアミックスで重要なのはキャラクターである。キャラクターが持つ個性と世界観が、メディアを横断的に駆け回ることで、強力なビジネスモデルが出来上がる。


これは日本最古のTVアニメから変わっていない。「鉄腕アトム」の製作で大量の資金が必要になった虫プロが、明治製菓に著作権の二次利用を許諾したことで、日本のアニメのビジネスモデルが確立された。アニメとはキャラクターであり、キャラクターを様々なメディアに展開することでマネーを獲得する産業なのだ。


キャラクターを作り出す過程において、物語は必ずしも必要ではない。「ブラック★ロックシューター」はキャラクターが先に誕生して、そのあと歌が出来て、アニメ作品になった。物語もキャラクター設定も無いゆるキャラが数えきれないほど誕生している。


ショートアニメはビジネスとして理に適っている。少ない予算で短いアニメでも、キャラ立ちさえすれば、ビジネスを展開する必要条件をクリアできる。リスクを冒して30分アニメを作らずとも、メディアミックスして、二次利用の許諾料でマネーを回収できればいいじゃないか。


いや、いいのだろうか。


この妥協は悲しい。制作会社や投資組合がリスクを許容できず、そして、マネーを拠出できず、結果としてメディアミックスありきの低予算作品しか作れない。海を越えたアメリカでは、TVドラマシリーズでファンタジー作品やらSF作品を作っているというのに、日本では虫プロがリミテッドアニメーションを生み出した時から状況は変わらず、低予算で作品を作り続けるしかない。


筆者はリミテッドアニメーションをパロディにした「ニンジャスレイヤー」も好きだが、トリガーが作った動きまくる壮大なSF作品も見てみたい。


金をかければ必ずしもいいモノを作れる訳ではないが、金が無ければ作れないいいモノもある。日本のコンテンツ業界は「パシフィック・リム」を撮れなかった。日本のロボットアニメのオマージュなのに、日本の業界の資金量では到底不可能だった。これを撮ったのは、カリフォルニアの映画会社と日本大好きのメキシコ人だったのだ。


パイロットシーズンの導入


アメリカのTVドラマのクオリティの高さは頻繁に言及されるところだが、クオリティの高さを支える仕組みとしてパイロットシーズンがある。


アメリカのTVドラマは、秋に新しいシリーズとして放送する前にパイロット版が作られる。大手ネットワークはこのパイロット版を毎年5月にリリースする。2015年は大手ネットワーク各社で合計80本のパイロット版がリリースされた。


パイロットシーズンの目的は、TVドラマのリスクをヘッジすることにある。まずは限られた予算を用いてパイロット版のみを製作し、視聴者に受けるかを測定する。受けなければそれまで。受ければそこから資金を投入して、TVシリーズとして放送する。80本のパイロット版が絞られるわけだ。


出資する金融機関や関連会社は、パイロット版の実績を基に、出資金額を算定できる。蓋を開けてみないと分からない作品に投資するケースに比べて、確固たる実績を基にリスクを判定できるため、より多くの資金を拠出できる。


マンガやライトノベルを原作としたアニメが日本で量産されるのも、考え方は同じだ。実績があれば、ビジネスのリスクは低下する。原作、脚本、制作会社等、様々なレベルの実績が作品に受け継がれていくが、実際の作品の評価を超える実績は無いだろう。


このパイロットシーズンをアニメ産業に持ち込んだら面白いのではなかろうか。要はシーズン最初の"切る・継続する"判定を前倒しさせるのだ。


アニメのパイロット版、いわば第0話を作り、それを公開する。視聴者に受ければ、その実績を基にファイナンスを計る。今まで「リスクが高すぎる」といって敬遠してきた金融機関等がコンテンツに対して資金を拠出しやすくする。そして、クール・ジャパン、クール・ジャパン言うてる政府が政策金融公庫に特別枠を設けて、低利子で貸付できるようにする。(韓国なんてデジタルコンテンツに出資するソブリンファンドがあるんやし、やってくれるやんな!?)


目指すべきはシンフォギアGX第1話


ここまで来たところで、ようやくトップ絵の話をしたい。


アニメのパイロット版ってどういうものがいいのか、というので、直近で最もイケてると思われるサンプルが「戦姫絶唱シンフォギアGX」の第1話である。


www.nicovideo.jp


筆者はGXを観るまでシンフォギアをノーマークだった。ただの一話も観ていなかった。


が、GXのこの一話で完全にハマり、無印・Gと一気に観た結果、寝る前にきねくり先輩の「教室モノクローム」を観ないと寝られない身体になった。


www.youtube.com


とにかくGXの第1話は良くできている。魅力的なキャラクター、熱い戦闘、かっこよすぎる音楽、度を越したテンポの良さ、ちょっとしたおふざけ。第1話にはシンフォギアのあらゆる魅力が詰まっていて、とにかく何度でも観られる。「RADIANT FORCE」が流れる最初の6分だけでも観たくなる。


パイロット版が果たすべき使命は、キャラクターの魅力、世界観の深さと広がり、この先に起こる出来事の伏線といった要素を遍く伝えることだ。そして、視聴者からの信用と実績を勝ち取ることである。


「がっこうぐらし」であれ、「おそ松さん」であれ、ニコ動で配信しているアニメには、多少オーバーした予算や脚本的な無理難題を織り込んででも、圧倒的なパワーが投じられた第1話が多い。(この流れは2013年放送の「琴浦さん」から始まったように思う) 第1話で大量の視聴者を惹きつけられれば、シーズンを通じた視聴率・アクセス数をある程度確保できる。第1話を無料配信することが多いため、後追いの視聴者も確保できる。


この第1話をパイロット版にすればいいのに、と思うのだ。そして、パイロット版を公開したあとに改めて資金調達すればいい。


繰り返しになるが、金をかければ必ずしもいいモノを作れる訳ではないが、金が無ければ作れないいいモノもある。ショートアニメの良さもたくさんあるが、リスクマネーが調達できないため、スケールの大きな作品が作れない、という現状のアニメ産業には、改善の余地が大いにある。


とにかく結論としては、資金調達スキームを改善して、制作会社にマネーが行き届くようにして、「きんいろモザイク」の第3期を作ってくれないかなぁということに尽きる。


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