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監獄学園11話の花の心理描写が凄まじい

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©八光学園裏生徒会


筆者の中で今期ダントツ1位の面白さの監獄学園。監督の水島努は、去年SHIROBAKOという感動的な作品作ってたのに、今年はこんなん作っちゃったみたいな爆弾をしこんできた。


ストーリーは抜群に面白い。作画もめちゃめちゃ綺麗。声優陣は豪華。唯一の欠点は、メシ食いながら見られないことかな。


今週のニコニコで配信されていた11話。


退学までのタイムリミットは1日。退学を阻止するために、裏生徒会側の陰謀を暴こうとするキヨシ、ガクト、シンゴ、ジョー、アンドレの5人。監視役の副会長芽衣子を罠にはめようと企むも、最後一日は芽衣子ではなく花が監視役に抜擢された。武闘派で用心深い花を欺くため、花といろんな因縁があるキヨシがおとり役を買ってでるのだが…。


とにかく、ラストが衝撃的。


花が(ある意味)キヨシに対して告白をするのだが、そこにいたるまで、花の心理描写が凄まじい。


普通、恋愛マンガやドラマであれば、数日・数週間で起こるイベントを通じて、ヒロインがだんだん心変わりしてきて、恋心がいったり来たりして、諦めたり決心したりして、それで最後は街灯の下で二人が…ッッ!みたいなことが多い。


監獄学園では、それが数十分で行われる。


とにかく、花に色んな意味で決心させるために、数十分の間で、彼女の精神をボッコボッコにする。丁寧に丁寧にイベントを用意して、花の感情を揺さぶり、最後は地獄に叩き落す。原作も脚本も、とにかく11話のくだりを考えたスタッフは天才だ。


1. 疑念


最初は、練馬一の知将ガクトが、キヨシと花の因縁を知っているかのような発言をする。キヨシというおとりを花の元へ送り込む戦術なのだが、これが見事にうまくいく。


「くそ、くそくそ! 散々でござる! 許さんでござるぞバカキヨシ殿! 花殿とつるんで、 自分だけ助かろうとしているキヨシ殿にケガまでさせられて!キヨシ殿説明してもらおう!花殿と何があったんでござる!」


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©八光学園裏生徒会


今までの色んな因縁、「おしっこ見られたり」「おしっこかけられたり」「エリンギ押し付けられたり」したけど、これは二人だけの秘密。目撃者はいないはずだ。


とはいえ、キヨシはしゃべっているかもしれない。恥ずかしいのは、主に女である花だ。キヨシのほうは、面白おかしく他の皆にしゃべっているかもしれない。


花は、醜態を晒した時から、そんな疑念を払拭できずにいた。なので、キヨシにやたらと執着してきた。キヨシの弱みを握らない限り、この疑念を晴らすことはできない。そんなキヨシに対する執着は、屈折した好意に変わってきているのだが、本人にはいまいち自覚がない。


その疑念を増幅させるようなガクトの発言。さすが練一の知将


2. 混乱


最後の一日、今までの因縁に決着をつけるべく、そして、キヨシに自分と同じように醜態をさらさせるため、花はキヨシを個室に連れ込む。


花には色んなプライドがある。空手の有段者であり、性格も二面的。決して相手に弱みを見せないように、常に強い自分を演じている。弱い自分など、ありえない。


そんな強い自分の裏側を見られた唯一の人間がキヨシだ。だから執着する。


そして、キヨシに復讐をする第一歩として、ペットボトルを渡して、ここでおしっこしろと、キヨシに命じる。


ここまで恥をさらしてきたが、強い自分を崩したくない花は、つっけんどんに、あくまで高圧的にキヨシに接する。


が、ここで予想外のことが起こる。キヨシが今までの態度を一転させたのだ。


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©八光学園裏生徒会


堂々と且つ華麗に、ズボン、パンツにまで手をかけ、ポンポンスーになるキヨシ。そして、一言


「やりましょう。さあ、そのペットボトルを持っていてください。おしっこが出るところをお見せしましょう」


キヨシも、恥ずかしいのを覚悟で、あえて花を追い込むために役を演じているのだが、花はキヨシの術中にはまる。


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©八光学園裏生徒会


窮鼠猫を噛む。強気で行こうと思っていたのに、まさかキヨシのほうが強気でくるとは。完全に場を飲まれる花。


ペットボトルを股間に差し込み、左手を腰に当て、カッコつけて台詞を決めるキヨシ。


「さあ、持ってください。出しますから」


「な、なんであたしが持つのよ。自分で持って出せばいいでしょ」


「ダメです。僕は右手を股間に、左手を腰にそえながらじゃないと、うまくおしっこできないんです。じゃないと、そこらじゅうに飛び散りますよ」


うん、何いってんだこの男。


しかし、キヨシの策に見事にはまってしまった花。瞳孔は開きっぱなし。


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©八光学園裏生徒会


3.目には目を、股間には股間を


「何よ!なんなのよこいつ!バカキヨシのくせに!ちん○出したくらいで偉そうにしやがって! 」


混乱している花は、自分の優位を保つため、あろうことが自分のパンツに手をかける。相手が股間を出してせめてくるなら、自分も股間を出して対抗すればいいじゃないか。


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©八光学園裏生徒会


完全に自分を見失っている花は、正常な判断などできない。うら若き乙女と年頃の男子が股間を出し合ってたら、色々問題がありすぎるのだが、もはやそんなことはどうでもいい。


自分が優位に立つこと、そのためには股間を出さねばならぬこと。


そこに丘があるから、上に陣を構えなければならなかった馬謖のごとく、彼女に戦術は一つしかない。


「なんで、なんで花さんがパンツ脱いでるんですか」


「なんでですって? あんたにおしっこぶっかけるからに決まってるでしょ!」


しかし、キヨシは動じない! 監獄学園の生徒はうろたえない! この戦いは相手に怖気づいたほうが負けなのだ。キヨシはそれを理解しているのだ。


「ここで負けたら、みんなの努力が水の泡だ。ひくもフルチ○。ひかぬもフルチ○。ならば俺は、前に出る!」


あくまで平常心を装い、股間を出して、モデル歩きで花に近づき、壁ドンするキヨシ


4. ワンツーフィニッシュ


キヨシの突拍子もない行動に動揺しきった花は、苦し紛れにキヨシに蹴りを入れる。しかし、この蹴りは勝つための蹴りではない。負けないための蹴りだ。


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©八光学園裏生徒会


「近えんだよクソが! 調子に乗んなよクソが!」


強がる花は、例えるなら虎牢関を囲われた董卓、火の船に囲まれた曹操である。


そして、ここで花を徹底的に追い込む事件が二つ起きる。


一つは、蹴りを入れられてしゃがみこんだキヨシに、彼女のメデューサをおもいっきり見られること。


おしっこを見られ」、「おしっこをかけられ」、「エリンギを押し付けられ」、挙句の果てに、最も大事な何かを失う花。


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©八光学園裏生徒会


「僕のナニがかちんこちんになって、男はナニがかちんこちんになると、おしっこが出にくくなるんです!」


「あんた、なんでかちんこちんになってんのよ! 変態!」


「すいません、でも、でも花さんのメデューサが!」


「恥ずかしくないの?こんな状況でそんなんなって最低ね!」


「恥ずかしいです…。最低です! 僕は今、かちんこちんであれなんで、花さんからお先にどうぞ!」


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©八光学園裏生徒会


花は、うろたえながらも、必死になってキヨシにまたがり、おしっこをかけて仕返ししようとするも、ここでももう一つの事件が起きる。


監獄の5人が怪しいことをしないよう見張っていた芽衣子が、周りをうろついていた杏を捕まえ、杏を監獄の中に入れようとする。


しかしまあ、ぽんぽんすーの男女がいる特別な空間に芽衣子を入れるわけにはいけない。そうなったら最後、到底言い訳できないことになる。


「だめ! こっちは絶対大丈夫だから、それより、そいつを早く引き離したほうがいいよ! 中に入り込む作戦かも!」


が、ここで大失態。キヨシは蹴られて床にへばっている。そして、花は芽衣子が入らないようドアを抑え込んでいる。


まあ、こうなる。


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©八光学園裏生徒会


5. 吹っ切れた


「なに、見てんの…」


「すいません、つい、メデューサが、目の前に、来たので」


そして、泣き崩れる花。


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©八光学園裏生徒会


「何が…メデューサよ…勝手に名前つけるなよ…。ずるいわよ…。あんたばっかり…。なんで私ばっかり、辱めを受けなきゃならないのよ…。あたしばっかりじゃん!おしっこ見られたのも、おしっこかけられたのも、エリンギ押し付けられたのも、人生初めてなんだぞ!!」


いやあ、花澤さん、いい仕事してますね(ゲス声)。


ていうか、ここまで花を追い詰める、スタッフの愛、そして鞭。他人に弱いところを見せられない花を、追い込み、追い詰め、最後に涙を流させるという、スタッフのドSっぷり


そして、馬鹿みたいに丁寧な心理描写。


これだけ丁寧に、登場人物の心の動きを描いて、ある種の"萌え"に昇華するスタッフの力量は「こころ」を書いた夏目漱石に匹敵する。


女を泣かして、我に返ったキヨシ。平謝りしかしないキヨシに対して切れる花。拳を握り、号泣しながら、2発3発4発と、殴りつける。


散々殴りつけたそのあとで、突然のキス。


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©八光学園裏生徒会


「これは…一体。何が起きているんだ…」


「ふふ、ふふふふ」


「何を笑ってるんですか…なんでこんなことするんですか」


「くそキヨシ。お前好きな人いる? 」


「いや、それは…その…」


「ざまあみろ! お前の初めてのチューを、大事な初チューを台無しにしてやったぞ!ざまあみろ!」


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©八光学園裏生徒会


これは花の告白シーンだ。自分をさらけ出せない女の子が、精神をボッコボコにされ、恥辱の限りを味わった結果、自分の屈折した恋心を愛する男にぶちまける、告白シーンである。


これはもう、不安定な女を描かせたら右に出る者がいない、デヴィッド・O・ラッセルの映画だ。そういえば「世界にひとつのプレイブック」で、 ジェニファー・ローレンスがブラッドリー・クーパーに抱きついた後、何も言わずに平手うちをするシーンがあった。


愛と暴力は表裏一体なのだ。


自分をさらけ出せない花が、重なる衝撃的なイベントで精神を揺さぶられた結果、許容できる心理状態が飽和してしまい、愛と暴力が同時に噴出したのだ。


最後、キヨシの頭を寄せ付け、ゆっくり、ゆっくり唇を重ねる花。


「お前の嫌がることなら何でもやってやる。これは、お前への復讐だ」


愛が…重い!!



※※※



監獄学園11話のBパートは、噂ではテレビ局からめちゃめちゃ怒られて、2期が破談になったとかならなかったとか。


しかし、キヨシの股間にペットボトルブッ刺しているところとか、花の股間からメデューサが飛び出しているところとか、色々問題はあるし、ぎりぎりアウトかセーフかといわれれば、アウトの部類に入るとは思うが、兎に角、この11話の花の心理描写は凄まじい。花を追い込み、涙を流させ、告白までさせるその演出、物語構成は、他のアニメ作品では到底見られない、至極の一品である。


見ていない人は、とにかく、ニコ動ででも何でも、観たほうがいい。この1話にだけ課金しても、見るだけの価値はある。


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