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どんな人材がベンチャーに向いているのか

I'd Rather Be Rowingflic.kr photo by TexasEagle


著者は、ITサービスを作ろうとしているのだが、コンサルティング会社出身で、技術・デザインのバックグラウンドは無い。使える言語といえばABAP(ドイツ製ERPの開発言語)とVBA、出来るデザインといえばパワポスライド作りくらいだ。ハッカソンに参加して、"プランナー"のタグをつける度に、"役に立たない人材"と自分で表明しているようで、自己嫌悪に陥る。


高校・大学、社会人になった後も、社会科学系の本や文学を読んだり、オタクコンテンツを消費したりしてきたので、そっちの知識はソコソコあるかもしれないが、ITサービスをつくるために必要な即戦力な知識というのは乏しい。会計仕訳は切れるがPHPは書けないし、契約書は書けるがロゴはデザインできない。これじゃあいかんと思って必死に勉強している毎日である。


やっぱりベンチャーといえば工学・コンピューターサイエンスの学位があるほうがいいよな、専攻間違ったよな、とか思っていると、こんな記事に出会った。Forbesの記事だ。


www.forbes.com


リベラルアーツ系の学位がシリコンバレーで人気がある、という内容である。創業から2年足らずで10億ドルの企業価値をほこるスラック・テクノロジーの創業者であるスチュワート・バターフィールドは、カナダのビクトリア大学で哲学の学士号、イギリスのケンブリッジ大学で哲学と科学史の修士号を取得した。専門はヴィトゲンシュタインらしい。


スラック・テクノロジーだけではなく、リベラルアーツ系の人材を重視するというのは、シリコンバレーのトレンドらしい。リンクトインがノースウェスタン大学を卒業した学生を調査した結果、心理学、歴史、ジェンダー研究等を専攻した学生がシリコンバレーで就職口を得ている割合は、工学やコンピューターサイエンスを学んだ学生の割合を超えていたという。ウーバーやフェイスブックでも、非技術系の求人数が技術系の求人数を上回っている。

ベンチャーに適した人材はジェームズ・ボンド?


Yコンビネーターのサム・アルトマンは、スタンフォード大学の講義で、ベンチャーに適した人材はジェームズ・ボンドのような人間だ、と言っている。


ボンドは"行動・決定が早く、クリエイティブで、どんなことにも対応する覚悟がある"人物だ。(言うまでもなく、デューク・東郷と読みかえても全く問題はない)


一つのことに特化しているよりも、ボンドのようなこれらの素質がある人材が、ベンチャーには向いているという。


筆者も、会社を立ち上げて思うのは、とにかくあらゆることに対応しなければならない、ということだ。人に会って、契約書を作って、コーディングをして、帳簿をつけて、提出用の書類をキーコースで印刷して…。あらゆることが役割分担できていた大きな組織を離れてしまえば、そのあらゆることを一人で担わなければならない。あらゆることを幅く広く、一瞬で自分のモノにして、対応しなければならない。


それはまるで、ボンドがヘリコプターを操縦していたかと思えば、そこから飛び降りてパラシュートを開き、着水と同時にボンベをつけて海に潜るみたいなことだ。


スラック・テクノロジーのバターフィールドも論理哲学論考に詳しかったが故に会社を大きくできたわけではない。そして、シリコンバレーが求めているのも、チョムスキー階層やナポレオン戦争の知識そのものではない。リベラルアーツの知識取得によって裏付けされたあらゆる場面への知識・能力の応用力が求められているのだろう。

とはいえ、最低限必要なのは


とはいえ、新しいITサービスや、モノづくり、バイオ系の会社を立ち上げようと思ったら専門知識は不可欠だ。特に、プログラミングの知識はWebサービスを始めるだとか、統計データをいじるだとか、あらゆる場面で必要である。ベンチャーといえば、とにかくコーディングが出来ないと始まらない。


筆者も、今のままではいかんと思って、自力で勉強を始めた。Webサービスだったら、とりあえずフロントエンドのCSS・PHP・JavaScriptあたりは必須だろうと思って、エディタとにらめっこする毎日である。例え優秀なエンジニアが会社に来てくれて、彼・彼女があらゆる技術的な面倒を見てくれたとしても、自分の理解力如何によって、うまく一緒に仕事できるかどうかが変わってくる。(ユーザーの阿呆な要件が現場のプログラマーを息絶えさせるのは日常茶飯事だ)


とにかく、ベンチャーをやるために必要なのは圧倒的な好奇心と、何でも食ってやろうという雑食性だと思う。日進月歩。学び続けるのが大事だ。


自分の技術力の無さを省みる度に、壁に強粘着ポストイットで貼り付けてある言葉を眺める。いつか、ツイッターのタイムラインでふと目に入ってきた言葉だ。


"あなたより上手な人がいるからといって、あなたがやらない理由にはならない。"