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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』ドラマ化訴訟における第三者とは誰か

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)


辻村深月の小説『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』のドラマ化を巡って、一方的に制作中止に追い込まれたとして、NHKが講談社に損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁はNHKの訴えを棄却した。


www.huffingtonpost.jp


2chまとめサイトを見ていると、NHK担当者の「放送局として我々が作る編集内容に関して第三者が口を出せることを認めてしまうこと自体がほとんど検閲にあたる」とのコメントに対して、「原作者が第三者って何様やねん」というコメントがたくさんついている。


とはいえ、このドラマ化許諾に関する取引きにおいて、最も利害の少ないプレイヤー、つまり第三者は言うまでもなく講談社である。


通常、出版社は小説を出版する際に原作者と契約を結び、著作権の一部たる出版権(当該著作物を独占して出版する権利)を得る。これは著作権の一部であり、財産権や著作者人格権は原作者が保持する。


記事には、講談社が原作者から著作権の管理委託を受けていた、と書かれているので、辻村と講談社は出版契約とは別に、講談社が二次利用の窓口を担い、その対価として一定の手数料を辻村に請求する契約を結んでいたのであろう。


ドラマ化に際してトラブルになったのは、NHKが原作者ではない第三者(とはいえ二次利用の代理人)である講談社とのやり取りであり、NHKが損害賠償を求めているのはその第三者たる講談社に対してである。脚本に口を出してきた原作者たる辻村は被告ではない。NHK担当者の検閲云々のコメントの矛先は講談社ではないのだろうか。


※※※


NHK(並びに講談社にとってもであるが)の落ち度は、二次利用に関して契約書を取り交わさず、口頭でのやり取りをもとに準備を進めてしまったことにある。内容の改変に関する原作者-代理人-制作者間の承認プロセスを契約書で合意していれば、訴訟に至ることもなかったであろう。


もういっそ、辻村は講談社抜きでNHKと殴り合って、脚本を作り直させれば良かったのではないかとも思う。プレイヤーが増えれば、往々にして、話が複雑になる。講談社は辻村の著作を使ってビジネスを行いたい利害関係者なので、交渉が三つ巴になっていたのではないか。


村上春樹なんかは、個人で韓国の出版社相手に超高額のギャランティーをぶんどったり、商魂たくましさを見せてくれているし、佐藤秀峰なんかは、出版社・テレビ局もろもろぶった切りながら自分のコンテンツを使ってビジネスを展開している。原作者自身がここまでコンテンツを使いこなせれば殊勝である。


創作に集中したいのでビジネスに係る面倒なことは出版社に任せようという原作者が多いことも考えられるので、代理人契約ももっと高度化されなければならない。代理契約しているにも関わらず、口頭ベースで著作権ビジネスが展開されているようでは、リスクがあまりにも大きすぎるといえよう。