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大阪でベンチャーやってます

ベンチャー/スタートアップ(と時々趣味)に関する記事を書くブログ

リアルマネーとゲームの世界観

ゲーム

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2014年1月-9月の全世界オンラインゲーム(MMO)の収益トップはリーグ・オブ・レジェンズで9億4,600万ドル、次にクロスファイアで8億9,700万ドル、アラド戦記が8億9,100万ドルであった。2013年にトップを走っていたWorld of Warcraft(WoW)は7億2,800万ドルで4位に落ちた。


ソーシャルゲームで馴染み深いリアルマネーを用いたアイテム課金はMMOの世界でも旺盛だ。リーグ・オブ・レジェンズでは、使用するキャラクターやキャラクタースキンを変購入するためにRiot Pointsと呼ばれるゲーム内マネーをリアルマネーで購入できる。WoWではCelestial Steedと呼ばれるMount(乗り物)が25ドルで発売され、発売日に350万ドルを売り上げた。



『WoW』の有料アイテム、Blizzardの利益は1日で350万ドル以上? | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト


リアルマネーでゲーム内の乗り物を買う。25ドルといえば、ともすればゲームを1作買える値段だ。しかし、ゲームの世界に魅了されたユーザーは25ドルを光るペガサスの値段として妥当と考える。現金をはたいてでも、このMountに乗って戦場に出たいと考える。WoWのショップに行けば、Celestial Steedの他に多様なMount、ペット、ヘルムを購入できる。また、キャラクターの名前を変更できるし、見た目も変更できるし、種族も変更できるし、異なるコミュニティーに自分のキャラクターを移送できる、リアルマネーを支払えば。


筆者が昔プレイしていたUltima Online(UO)はゲーム内で(月額利用料を除き)直接課金することはできなかったが、リアルマネートレード(RMT)と呼ばれるユーザーが開く非公式なネット上のマーケットがあった。そこでは、GP(ゲーム内のマネー)、レアアイテム、不動産、はたまたアカウントまで取引されていた。筆者も、どうしてもほしいものがあり、RMTに手を出した。家である。


何せ、筆者がプレイしていた頃のUOでは、家を建てる権利書はゲーム内で買えるが、家を建てる土地が枯渇していた。長期間使われていない家は崩れてなくなり、新しく家を建てることができたため、数時間以内に崩れるであろう家にプレイヤーが群がる、通称腐り待ちが行われた。腐り待ちには何十というプレイヤーが待機するため、崩れた直後に自分が家を建てられる確率は限りなく低い。家を持つのは夢のまた夢であった。


ほしかったのは、Small Stone Towerと呼ばれる家で、値段は、土地にもよるが、だいたい1万円前後でRMTで取引されていた。高いとは思ったが、相応の価値はあると判断し、購入に至った。


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リアルマネーで買えるもの


UOのRMTではあらゆるものが取引されていたが、買えないものがあった。それは至極簡単で、強さである。攻撃力が高い武器、防御力が高い防具はあるが、レアというほどでも無い。魔法力・攻撃力といったキャラクターのスキルもある程度の時間を掛ければ最大値にまで上昇する。プレイヤーの強さは、掛けたマネー(リアルであれ、ゲーム内であれ)ではなく、操作の巧拙に比例した。 PvP(プレイヤー同士の戦い)がうまい人を見るにつけ、魔法を詠唱するタイミングや、武器の切替、爆弾ポーションの使い方等にほれぼれしたものである。


リアルマネーを投入することで得られるのは効率であった。それはゲーム内で土エレメント(お金を稼ぎやすいモンスター)を倒す時間であったり、腐り待ちをする時間を効率化するものである。数十時間、パソコンの前に座って、死んだような目で単純作業を繰り返すよりも、同じ時間をアルバイトに費やして、そこでゲームに課金するリアルマネーを稼いだほうが効率が良いのだ。


効率によって得られるのは、皆と同じスタートラインに立つということ。UOの場合、全てのスキルが最大値に到達してからが始まりである。スキル上げのみでは付加価値は得られない。また、リーグ・オブ・レジェンズの場合、リアルマネーを投入することで、チャンピオンと呼ばれるキャラクターの使用制限を解除できる。時間をかけてゲーム内マネーをためて使用制限を解除するよりも、リアルマネーを投入すれば、すぐにでも解除してプレイできる。が、キャラクターの強さは本当の意味の強さには直結しない。それはプレイヤーの鍛錬と成長に委ねられている。


League of Legends (輸入版)


対して、WoWである。WoWは強さに直結するレベルを上げるための"Level 90 Character Boost"なる商品を売り出した。リアルマネー60ドルを支払うとレベルを90までを上げることができる。言うまでもなく、レベルと呼ばれる強さの指標を持ったゲームでは、レベルは攻撃力・守備力といったステータスに直結する。レベルを買えるということは、強さを買えることに等しい。 無論、90をボトムラインとして、プレイヤーの巧拙が付加価値として発揮されるのであろうが、それでも、である。この商品はユーザーの批判を呼んだ。


また、Diablo3ではオークションと呼ばれるプレイヤー同士がレアアイテムを売買できる仕組みがあった。ユーザーは、Diablo3のダンジョンを探索してレアアイテムを探索する代わりに、オークションで買い物をするようになった。Diabloの世界では、レアアイテムのバリエーションが豊富であり、強さの底が無い機能が付加されたアイテムが手に入ることがある。それは、死ぬ思いで深いダンジョンを探索した者が得られる報いであった。しかし、オークションを通じて、他のユーザーが得たアイテムを購入できるようになったことで、レアアイテムはこの冬に着るダッフルコートと等価になった

その楽しさは、買う楽しさ。
その面白さは、買い物の面白さ。
その素晴らしさは、オークションの素晴らしさだ。

博士号を持つ優れた技術者達が作り上げた、
完全無欠の完璧な、買い物インストラクチャーだ。




お金を支払う。
物を買う。

手に入れる。
実際に使用する。




それは、人にとって根源的な喜びだ。
その喜びをアクティビジョンは提示した。
完全なまでの姿をもって、人々の前に差し出した。




それは、まるで、完全な快楽。
ディアブロ3の快楽。
気持ちよさ。
楽しさ。
全て。


超一流のディアブロ3と三流の糞ゲー。 - 真性引き篭もり

リアルマネーで買えてはいけないもの


リアルマネーを投入して買えるものは、プレイを効率に進めるものであったり、めったなことでは得られない希少なものであったりする。そこに、ユーザーは喜んでお金を支払う。ゲームの世界観を愛しているということは、リアルマネーをはたいてでも、ゲーム内の家や希少な乗り物を購入する。


しかし、その金がゲーム内の強さに比例した時に、ゲームの世界観が崩壊する。リアルマネーを投入すれば波動拳の破壊力が3倍になる格闘ゲーム等、誰がやるだろう。重課金で強化したユーザーのみ勝てるPay to Winの果てにあるのは、成長の無い、不毛な大地である。


ユーザーが嫌うのは露骨さであろう。金さえ出せば強くしてやるという上から目線。そこにはあるのはゲームのロジックではなく、ビジネスのロジック、リアルな世界のロジック、資本主義のロジックである。


Diablo3のオークションは廃止された。Pay to Winの行き過ぎた形として、Diabloが作り出した世界観をぶち壊してしまったのだ。


ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ アルティメット イービル エディション


MMOではなく、ソーシャルゲームに目を転じると、旺盛なのはレアアイテムの得る手段としてのガチャである。Diablo3ほど直接的ではないものの、ガチャへのリアルマネーの投入は強さに直結する買い物という行為に等しい。運営会社にとっては、アイテム課金は収益と引き換えにゲームの世界観をぶち壊す劇薬だ。マネーとゲームの世界観は相容れない。ビジネスの気配はゲームが人を魅了する磁場を弱めてしまう。


それでもビジネスモデルとして、アイテム課金の仕組みは強固である。そして、これらの会社は大きな収益を上げている。ビジネスモデルを支えるのは、ゲームの世界観を犠牲にした買い物の快楽である。


とはいえ、このビジネスモデルは永続的なものなのか。それとも、Diablo3のオークションと同じく、崩壊の道をたどるのか。


リアルマネー-ゲームの世界観のバランスが保たなければならない。しかし、バランスをとるための点は限りなく小さい。


※2015年2月21日追記: ブクマの指摘を受けて、"トップ10に食い込む日本企業はメイプルストーリーのネクソンのみである。"の文言を消しました。アラド戦記もネクソンでした…。