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ゲーム業界をマーケティング視点で読み解く

いわゆる「eスポーツはスポーツなのか?」問題について

London 2012 Olympic Games
Photo by Alistair Ross


 eスポーツを「スポーツ」と冠すると反感を持つ一般視聴者が一定数存在するらしい。フィジカル要素の少ない競技を「スポーツ」と呼ぶことに違和感を覚えるようだ。


www.j-cast.com


 以下、引用記事のコメントの孫引き。

「汗水流して努力しているアスリートと同じとは思えない」
「ゲーム依存の問題深刻になってますよね!(その問題が)増えるだけ!!」
「ゲームばっかりやっていてはコミュニケーション能力育たないのでは?」


 本題に行く前に、いやいや朝から晩まで野球の練習に没頭する子たちに依存症って言うか?とかゲーマーのヘッドセットって何のためにあるか知ってる?とか言いたいことは色々あるが、「汗水たらしていない」という発言について思うところは多い。


 そもそも汗水流さないスポーツなんてごまんとある。


 カーリングは戦略性と集中力と細かな動作が求められる競技だが、雪上競技のような強靭な「フィジカルな要素」が求められるかといえばそうではない。フィギュアスケートとスピードスケートは同じ氷上競技だが求められる「フィジカルな要素」は全く違う。ボブスレーは己の「フィジカルな要素」だけでなくそりの性能まで問われるスポーツである。


 スポーツに求められる一律な「フィジカルな要素」なんてものはない。道具を使うもの、芸術点を競うもの、自然を味方につけるもの、色々なスポーツがある。あらゆるスポーツに共通なことは「一定のルールのもとに競う」ことぐらいである。

 
 eスポーツが「汗水たらしていない」というのなら、「Dance Dance Revolution」ならスポーツとして認められるのだろうか。Kinectで全身を使うようなゲームタイトルならスポーツに認められるのだろうか。


 そもそも、障害者スポーツは義手・義足・車いすといった己の肉体以外のものを装着して競技を行うが、それもスポーツとして認められないのだろうか。


 武豊は「汗水流している」馬に乗っかっているだけだから、アスリートとは認められないのだろうか。


 ダーツは? ボーリングは?


 「フィジカルな要素」によってスポーツの定義を決めるというは恐ろしく不毛だし、心の底からどうでもいい


 身体を鍛え、頭を使い、自然を味方につけ、より早く、より強く、より美しく、より正確に。あらゆる要素がスポーツに含まれるだろう。


 平昌オリンピックにあわせて、史上初となる五輪公認のeスポーツ大会が開催された。使用されたタイトルは「スタークラフト2」。


 男女混合、全世界の頂点を決める大会で優勝したサーシャ・ホースティン(ゲームID:Scarlett)はカナダ出身の女性である。


 スウェーデンの「Counter Strike」のチーム「シルバー・スナイパーズ」はメンバー全員60歳以上だ。デビュー戦のDreamhackでは1試合で勝利を収めた。


 ゲームは人種も性別も年齢も越えて、誰でもプレイできる。身体に障害があっても、年齢を重ねても、皆が同じルールでプレイできる。ばあちゃんと父親と娘がスプラトゥーンで対戦してもいい。


 「フィジカルな要素」が限定されるからこそ、eスポーツはどんなスポーツよりも“平等”であり、だからこそ全世界でみんなが熱中しているのだ。

ゲームを義務教育で教えたほうがいい理由

education

photo by Sean MacEntee


 2018年に世界保健機関(WHO)による「国際疾病分類」が改定されて、その中に「ゲーム障害(Gaming Disorder)」なるものが入るらしい。


gendai.ismedia.jp


 精神障害の一つとして認められることで、例えばカウンセリングを受けるといった医療行為に保険がおりるかもしれない。延いてはゲームを“適度”に遊ぶ文化が生まれて、健康的で活動的な人が増えるかもしれない。知らんけど


 美馬医師の記事にあるように、「ゲーム障害」をはじめとした依存症に対しては医学的治療の適用範囲は限定的だ。薬や手術ではなく、患者同士がコミュニケーションをとって依存症からの脱却を図る「断酒会」のような手法が一般的。


 なんだけど、「ゲーム障害」なる精神障害分類が生まれて一番厄介なのは規制をつくろうと躍起になる人が出てくることだ


 ただでさえゲーム脳とか、暴力的なゲームが銃乱射事件をおこすとか、都合の悪い社会現象を叩きやすそうなゲーム業界に押し付ける人がいつの時代にも後を絶たない。


 「ゲーム障害」なる曖昧な精神障害分類を拡大解釈し、子供の学力低下、暴力事件などに強引に紐づけて、ゲームのパブリッシング時にいちゃもんを付ける規制や機関がうまれてもおかしくない。こんな規制や監督機関が生まれてもゲーム業界にとってうれしいことは何もない。1930年に導入されたヘイズ・コードがアメリカの映画産業にどんな(悪い)影響を与えたかを思い出そう。


 どうせやるなら治療ではなく予防をすればいいんじゃないかと思う。ゲームの遊び方を義務教育で教えるのだ。


 そもそも日本の家庭用ゲーム、アプリゲームなどを含めたゲームのプレイ人口は4,400万人。小さい子供から老人までなんらかの端末でゲームをプレイしている。他の依存症分類されているアルコールやギャンブルとは比べ物にならない人口が存在する。


 日本の子供は小学校に入る前からニンテンドーDS3DS・New 3DSなど含む)を一人一台保有し、インターネット回線につなげ、オンラインでゲームをプレイする。ニンテンドーDS保有率は11歳でピークとなり、男女ともに50%を超える。


 子供は一切の前知識のないままに、ネットに飛び込み、スプラトゥーンポケモンを遊び始める。親が「止めなさい」といっても聞かない。親もゲームのことをよくわかっていないので、「やるかやらないか」の選択肢しか示せない。


 ここで義務教育の出番だ。

 
 ゲームをプレイする前に、ゲームの歴史を教え、ゲームで使われているテクノロジーを教え、ゲームのジャンルを教え、ゲームが人間社会に与える影響力を教える。


 ゲームをプレイする時も、RPGなら町の人の話をよく聞くとか、FPSなら状況判断がいかに大事であるかとか、格闘ゲームならゲーム理論に触れながら報酬が最大化するように次のコマンドを決めろだとかを教える。いやまあ例えばだけれど。


 学習の範囲にゲームの依存性や健康に対する影響といったことも含めればいい。ただ「依存は良くない」「ゲームは悪だ」ではなくて、ゲームが人に対してどのような影響があるのかを科学的に教えればいい。


 ゲームに関する文化的、技術的、社会的、医学的な側面を教えれば、ゲームを通じて義務教育の他の学習内容に対する興味が広がるかもしれない。偉い人いわく、学んだこと同士をつなぎ合わせることで学びは更に深まるのだ。


 ゲームは映画と同じく総合芸術だ。そして芸術には良い面も悪い面もある。それらをぜんぶひっくるめて学んでいくのが教育ってもんでしょう。


 とにかく依存云々の話は置いておこう。そしてゲームがどのようなものであるかを義務教育で学べるようにしよう。


 話はそれからだ。

Google参入の衝撃。ゲーム業界に進撃するIT業界の巨人たち

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 何やらゲーム業界の中心…というよりその周辺が騒がしい。


 Googleが進めるコードネーム「Yeti」。IT業界の巨人が満を持してゲームストリーミングサービスに参入する、という噂である。


japan.cnet.com


 もし「Yeti」がChromecastで動くようなアプリケーションとして提供されるのであれば、ひょっとすれば、AndroidiOS端末で動くようになるかもしれない。家庭用ゲームが「Yeti」で配信されると、アプリケーションに対応した全てのデバイスでそのゲームが稼働する。ひょっとすると『モンスターハンター:ワールド』がiPadで動くようになるかもしれない。Googleのゲームストリーミングサービス参入はそんなことを予感させる。


 2012年、かつてのSCEが「Gaikai」を買収した際には「これからはゲームストリーミング」的な風潮もあったが、時間と共に風化してしまった。後継サービス「PlayStation Now」もまだまだ普及していない。


 潮目が変わったのは今年の1月24日。マイクロソフトXbox One専用ゲームをグローバルリリースと同時にストリーミングサービス「Xbox Game Pass」にリリースすると発表した。『Halo』も『Forza』も「Xbox Game Pass」を契約していれば追加費用無しで遊ぶことができる。Xboxプラットフォームの独占タイトルに乏しいマイクロソフトが大きく舵を切ってきた。


 ゲームストリーミングで先行していたNvidiaの「Geforce Now」も、今までは専用端末での利用に限定していたが、Windows PCでも利用できるようにサービスを拡張。最低限のスペックのPCと回線速度を確保すれば、あらゆるWindows PCで1080p、120fpsでゲームを遊ぶことができる。


 ゲーム業界ではマルチプラットフォーム化が急速に進んでいる。ゲームエンジンがあらゆるプラットフォームに対応することで、デベロッパーが大きな工数をかけずに複数プラットフォームでリリースすることが可能になった。グローバル市場で最も重要なSteam配信ゲームエンジンの恩恵にあずかっている。


 そして究極的なマルチプラットフォーム化ともいえるのがゲームストリーミングだ。ゲームの処理はクラウド上(AzureでもAWSでもGCPでも)行い、その結果だけを端末に表示すれば良い。


 マイクロソフトNvidiaといったIT業界の巨人たちがゲームをハード機からひっぺがそうと躍起になっている。更にここにGoogleが参入してくる。「Twitch」を擁するAmazonも黙っていないだろう。


 更に更に、マイクロソフトがSteamを買収して、「Steam配信ゲームも独占的に『Xbox Game Pass』で遊べます、Windows PCでOKよ」なんて言い出した日には、「わたし(100ドルでも200ドルでも)出すわ」的な勢いでクレカ登録するしかない。


 2017年のゲーム業界はNintendo Switchのヤバみが深かったが、2018年のゲーム業界はIT業界の巨人の進撃のヤバみがもっと深くてとにかくヤバい